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181222読んだ本【ネタバレ】

東欧出身の女性歌手で、アルバムには長い黒髪の女性の顔のアップの写真が使われていた記憶が・・・
中央公論社から出てた「マリ・クレール・ジャポン」を80年代末期~90年代初期に購読してて、同誌が
奨めるCDアルバムも何枚か買ったことがあった(^^) その一枚に入ってる、ある曲のメロディーが突然
頭の中で流れ出し止まらなくなった(@_@;) だが、納戸のCDの山を探しても見付からぬ(ノ_-;)ハア…
昨夜は数時間ネット検索も判らず、ほぼ諦めかけた頃に「ポーランド」で検索ヒットし辿り着けた(T_T)

【読んだ本(ネタバレ)】

杉本苑子『散華 紫式部の生涯(下)』(中公文庫,1994)所蔵本

紫式部は藤原道長の愛人という説があり、藤原道長が色々な女性に手を付けて宮中へ送り込んでたこと
や中世の史料に紫式部は道長の「妾」と注記されていることなどを根拠としてるらしい(@_@;) 他方、
紫式部は藤原道長の政敵である藤原実資と中宮・彰子との間の連絡役を務めてたことや紫式部が彰子に
仕えていた時期の藤原道長の健康状態から藤原道長は紫式部に手を出せるわけがないとの否定説(今井
源衛[日本歴史学会編集]『紫式部』[吉川弘文館人物叢書,1966→1985新装版])もある(@_@;)

では、苑子タンが本作品で紫式部と藤原道長の関係をどう描いているかというと、ネタバレになるが、
紫式部が宮仕えを開始した直後に、藤原道長によって手籠めにされてしまい、大変なショックを受けた
紫式部は娘が急病と嘘をついて実家に急遽帰ってしまい、何ヶ月も出仕拒否をして、「二度と無体な
ことはしない」という詫び状を藤原道長から受け取り、出仕再開後は今井源衛の指摘通りに、藤原実資
と彰子との連絡役に励むといった感じである( ̄◇ ̄;) 紫式部が宮仕え開始直後に何かショックな体験
をして里帰りし、何ヶ月も出仕を拒否したことは『紫式部集』の歌からも裏付けられるけどね(´・_・`)
でも、この苑子タンの描き方は『紫式部日記』『紫式部集』の2人の歌の遣り取りから見て疑問(@_@;)

    ・・・[『紫式部日記』に]ありのまま書き進めた中に、道長が露おもたげな
    女郎花の一枝を随身に手折らせて寄こしたある朝の、小市[=紫式部]みずからの
    体験までを洩らさず記したのは、この[『紫式部日記』の]草稿を、/「下書き
    ・・・・・・」/と思ったからだった。/道長は几帳の上から局の内を差し覗いて、
    /「さあ、一首、欲しいな」/と、このとき求めた。まだ化粧すらろくにして
    いなかった寝起きの顔を見られるつらさに、小市がうろたえながら、それでも
    谺[こだま]が返す早さで、

       女郎花さかりの色を見るからに
         露のわきける身こそ知らるれ

    ほんの当座のまに合せに詠んだ歌を、ばかに賞美してくれたこと。・・・

この後、本書は違う話へと転換してるけど、『紫式部日記』や『紫式部集』を確認すると、実は、この
紫式部の歌に対する藤原道長による返歌があったことが判ったぞ(ノ ̄皿 ̄)ノナンヤネン!┫:・’

山本利達(校注)『新潮日本古典集成 紫式部日記 紫式部集』(新潮社,1980)141頁の『紫式部集』の
紫式部の歌と藤原道長の返歌を、それぞれの現代語訳ともども引くよ(⌒~⌒)

    女郎花 さかり色を 見るからに 露のわきける 身こそしらるれ

      露に美しく染められた女郎花の盛りの色を見ますと、分けへだてをして
      露の置いてくれない私のみにくさが身にしみて感じられます。

    白露は わきてもおかじ 女郎花 心からにや 色の染むらむ

      白露は、そなたのいうように、分けへだてをして置いてはいないだろう。
      女郎花は美しくなろうとする自分の心で美しく染まっているのだろう。

語釈も全く無いなど、山本利達のはマジで使えないけど、この「女郎花」が中宮・彰子に仕えている、
自分よりも若い女房たちを指していることはすぐ解るし、南波浩(校注)『紫式部集 付 大弐三位集・
藤原惟規集』(岩波文庫,1973)の脚注は「気持ちを若く持ちなさい、という道長の励ましの歌。式部
の頭の回転の速さ、道長の返歌の快速さ、両雄相ゆずらぬ風雅の贈答である。」と評している(´・_・`)

でも、この「露」とは何を指しているのかしらね(@_@;) 紫式部は「露」が「分けへだてをして」自分
には「置いてくれない」と愚痴るのに対し、藤原道長は「白露は、そなたのいうように、分けへだてを
して置いてはいないだろう」と否定しているけど(@_@;)

この2首は、実は『新古今和歌集』にも撰ばれていて、その優れた注釈者たちは2首の意味するところを
ちゃんと見抜いてるんだよねヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪ 例えば、久保田淳『新古今和歌集全注釈 五』
(角川学芸出版,2012)は、「語釈」で〈「露」は道長の情愛を寓する。〉として、〈鑑賞〉で解説(^^)

    ・・・おみなえしを女性に見立てることは詩歌での約束となっている。作者[紫式部]は、
    美しく咲き誇っているおみなえしに、若く美しい盛りの女房の姿を見たのである。それは
    特定の若女房ではないかもしれないが、多くの若女房達と共に宮仕えしている作者が常に
    抱いていた、年齢的コンプレックスが口を衝いて出てしまったのであろう。作者自身も
    おみなえしには違いない。が、それは更[た]けたおみなえしである。その違いを露、
    主人道長の情愛の差に求めた。謙遜し、恨んでみせることによって、さだ過ぎた女の媚びを
    ほのめかした歌である。

これに対し、「道長にはもとより紫式部の気持ちは直ちに理解された。それで。軽くそれを受け流した
返歌をしたのである。」と藤原道長の返歌を〈鑑賞〉しているけど、この2首は、まさに、

    道長と紫式部との間柄を考える上で見逃せない贈答歌であろう。

という久保田淳の評(紫式部の歌の〈鑑賞〉の冒頭の一行)には心から納得しちゃうねぇv( ̄∇ ̄)ニヤッ

さて、この「道長の情愛」を求めるような歌を紫式部が詠んでいるのに、苑子タンが描いたような藤原
道長との関係は常識的にありえないでしょ(´ヘ`;) でも、苑子タン、和歌を解せないからねぇ(-ω-、)

本書において「今日[けふ]」と「京[きゃう]」は同じ発音で掛詞だと勘違いしてた苑子タン(-ω-、)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.so-net.ne.jp/2018-12-19
 
晩秋の歌なのに「やっと辛い夏を越し、涼風の立つ秋を迎えた」と本書で描写している苑子タン(-ω-、)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.so-net.ne.jp/2018-12-20
   
Basiaのアルバム「London Warsaw New York」の「Copernicus」という曲(〃'∇'〃) CDどこだ(@_@;)

[追記181222]

引用文の「・・・それは更[た]けたおみなえしである。」の「た」は原文ママ、つまり、原文に
そうルビが振られてるのですが(ルーペでも確認済)、常識的に「ふ」の誤植のような気が(^_^;)
タグ:小説 歴史 和歌
コメント(20) 
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コメント 20

たじまーる

私の人生ですが
東欧出身で思い出しましたが東ドイツの有名人(政治家)
エーリッヒ・ホーネッカーと仕事でお会いされ
対談された元外交官(全権大使)の方から
いろいろ影響を受けました。
全権大使をお辞めになったあとは教授として
歴史や呑み会で女性のことを教えて戴きました(^^)
middrrinさんは教授として紫式部のことをバリバリ教えられそうですのね(#^.^#)
by たじまーる (2018-12-22 18:59) 

middrinn

ホーネッカー議長は東独の最高指導者だった人じゃないですかヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ
特命全権大使は認証官で天皇陛下の認証が必要なポストですよ((;゚Д゚)ヒィィィィ!
たじまーる様も歴史秘話のようなことを色々と聞けたのではないかと(〃'∇'〃)
古本屋とかの国文学の棚は万葉集と源氏物語の本で一杯ですから、小生のこの
程度の読書量では、紫式部のことを気軽に語るのさえ勇気が要りますよ(^_^;)
by middrinn (2018-12-22 19:11) 

たじまーる

middrrinさん
私がお世話になりました教授(元東ドイツ大使)の本です(^^ゞ
参考にご紹介させていただきます。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784788700673
教授は立派でも私は昔も今もおばかなのです(苦笑)
20世紀のことでしたら多少はぼやけます、私(^^ゞ

by たじまーる (2018-12-22 19:50) 

そら

ふと思い立ったことを探しまくっても見つからない
こういう事ってたまにありますよねぇ!!
「確かあれはあそこに片付けたような・・・」なんて

昔の人が即興で歌を作れるのは凄いなと思いますよ
私なんて1日考えて頭に浮かびません(^^;
by そら (2018-12-22 19:56) 

middrinn

たじまーる様がお世話になったという元外交官の先生の御著書、
田中・ブレジネフ会談はちょびっと気になったので、利用可能な
図書館に検索かけるも無いから、のんびり古本屋で探します(^^)
by middrinn (2018-12-22 20:03) 

middrinn

未だに見付からないので、YouTubeのをリピートして聴いてます(^_^;)
そら様、歌なんて最初の五文字を思い付けば、「明治は遠く なりにけり
それにつけても 金の欲しさよ」を付ければ、何首でも詠めますよ(^_^;)
by middrinn (2018-12-22 20:06) 

センニン

こんばんは。
 美しくなろうとする自分の心で美しく染まっている
というのはちょっとねぇ . . . 。
by センニン (2018-12-22 21:04) 

middrinn

「美しくなろうとする」全ての人に希望を与える
御堂関白のお優しいお言葉ということで(^_^;)
by middrinn (2018-12-22 21:08) 

ニッキー

いきなりポンと脳内に曲が浮かんで
離れなくなるってありますよねぇ=(^.^)=
私の場合は、基本サビの部分がエンドレスで流れて
曲名がなかなか思い出せず、すっきりしないことが良くあります(⌒-⌒; )
by ニッキー (2018-12-22 21:56) 

ナベちはる

探したい曲、見つかって良かったですね。
歌詞ならまだ検索すれば何とかなる部分がありますが、メロディーはなかなかそうはいかないですよね…
by ナベちはる (2018-12-23 01:30) 

middrinn

曲名は知ってても、頭の中で流れ出して止まらなくなるのは困りますねぇ(^_^;)
ニッキー様、♪ この木 何の木~ 気になる 気になる~と流れ出した日には(-ω-、)
by middrinn (2018-12-23 07:51) 

middrinn

そうなんですよ(^_^;) 歌詞の一部分でも判れば
何とかなりそうなんですが(^_^;) メロディーを
鼻歌でYouTubeにアップして世に訴えるとか^_^;
ナベちはる様は、いよいよイベントですね(〃'∇'〃)
by middrinn (2018-12-23 07:54) 

mimimomo

こんにちは^^
もう数か月前、うちの近くのスーパーでBGMになっていた曲をどうしても題名を思い出さず、夫に思い出してもらおうとするも「音痴」がこの時は恨めしい。音楽が口ずさめない(-。-
結局分からず仕舞いで、何とも未だにもやもやしている。

昔の人はそれが当たり前なのかもしれないけれど、よく「歌」が直ぐ作れますね~
斎藤道三の「傘を貸してほしい」と訊ねたうちの女性が詠んだ歌。
蓑すらない家の女性が教養があるのでしょうね~(わたくしはその歌すらすぐ忘れる)
by mimimomo (2018-12-23 13:04) 

middrinn

そのスーパーに旦那様をお連れして聴いてもらうとか(^_^;)
台形の面積の公式の暗記とかしなくていいから、和歌の勉強に
精を出せたのかも(^_^;) 「七重八重花は咲けども山吹の実の
一つだになきぞ悲しき」なら、太田道灌ではないかと(@_@;)
by middrinn (2018-12-23 16:21) 

sana

紫式部が出仕してすぐ帰っちゃったのは史実のようですね。
その理由は‥ 小説でそうなるのは、もしかして他の理由じゃ面白くないんじゃない?かと^^;
道長は式部にちょっかいかけたのはまずありそうなこと。それは当時としては文を送るのは礼儀に近く、色っぽいやり取りも不名誉じゃないでしょうから。
ただ歌の内容は現実や本音そのままではないですよ~公開前提なので。
今の感覚でいう妾というようなものだったかは疑問です。
宮中にいるんだし、その後もとくに養った様子もないから。関係が深かったら、歌が大量に残っていそう。
実資との連絡は、それで道長の不興を買ったという説もありますね。
しかし「散華」は読んだような気がするのですが‥
色んな本とごっちゃになっていて、細部は何も覚えていません^^;
by sana (2018-12-23 19:26) 

middrinn

苑子タンはストーリーテラーなので、たしかに話を面白くしただけかも(^_^;)
ただ20日の拙稿で引用・紹介しましたが、『散華』執筆時に苑子タンは随筆で
「事実をねじ曲げてまで強引に、歴史上の事象なり人物なりを、そのテーマに
あてはめて動か」すことは、「歴史への冒瀆」と断罪してたわけですよ(^_^;)
sana様は「歌の内容は現実や本音そのままではない」とおっしゃいますけど、
古今集以来、和歌は人の心を外界の事物に託して表現した作品ですから「現実」
をそのまま写したものではないのはたしかですけど、私家集に入っている歌や
その詞書を歌の作者の伝記的研究の資料とすることは学問的にも王道かと^_^;
現に今井・前掲書や清水好子『紫式部』(岩波新書,1973)も同じ方法論ですし、
久保田淳の上記評言もソレを裏書きしております(^_^;) それに非公開を前提に
した作品の方が、虚構が混じり易いと愚考しますが^_^; 実資との連絡が道長の
不興を買って宮仕えを辞めさせられた、という展開でしたよ、『散華』は(^^)
sana様のあの膨大な読書量からして、きっと『散華』もお読みのはず(〃'∇'〃)
by middrinn (2018-12-23 21:21) 

Rifle

歌を日常的に詠んでいた宮中周辺ならではのお話ですねー。
拙者が歌を詠もうとしたら...うーん...まず入門書を探すところから始めなければ。(汗)
歌の解釈は古文の授業で散々やりましたけど、当時の情勢や周辺が判っていないと意味を取り違えたりするんで、歌だけではどーにもならん!こんなもんをどうして試験に出すんだ!!と憤慨した記憶が。(笑)
by Rifle (2018-12-24 07:19) 

middrinn

おっしゃる通りですよぉo(-`д´- o) 試験に限らず、詞書や左注
を無視して、歌だけを取り出して(しかも注釈書も調べず)素人
解釈を披露するバカが多すぎますヾ(`◇´)ノ 同じ歌でも、例えば、
百人一首と勅撰集とでは解釈が異なる例もあるんだから、何から
引用したのか明記しないと、解釈しようがありませんよヾ(`◇´)ノ
by middrinn (2018-12-24 08:04) 

mimimomo

あ、また名前まで間違った(-。-
歳のせいにしとこ。
by mimimomo (2018-12-25 07:51) 

middrinn

小生の知らない斎藤道三の逸話があるのかと、
念のためネット検索しちゃいましたよ(^_^;)
by middrinn (2018-12-25 07:57) 

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